3Dプリンター出力は、複雑な形状の部品や試作品を製作することが得意な加工方法です。しかし、精度は切削加工などの他の加工方法が得意とするところです。実際に使用する部品を3Dプリンター出力で製作するには、要求する精度が出せるかどうかが判断基準になります。
3Dプリンター出力で製作した造形物の精度は、型に流し込んで作る成形品の精度から、切削加工(±0.1mm~0.05mm)程度の精度まで、造形方式や素材、形状によって大きく変わります。
素材によって精度が変わるというのは物性による条件の変化という意味もありますが、3Dプリンターによって造形できる素材が決まっており、逆に言えば素材によって造形方式が決まります。造形方式と精度の関係は大きく、その意味で素材によって精度が変わります。
元のデータと比較すると±0.1mm~0.2mm誤差が生じます。X,Y方向(縦、横)方向とZ方向で精度の出しやすさが異なります。
加熱により樹脂材料が膨張します。そのため、X,Y方向における造形は外側寸法はプラス目に、内側寸法はマイナス目になります。片側で+0.1mmほど大きくなり、全体では+0.2mmほどの寸法誤差が生じます。
Z方向(高さ)には積層ピッチという数値が大きく関係します。積層ピッチとは造形を積み上げていく間隔、つまり積層の厚みです。これを厚みの最小単位として高さを積み上げていきます。積層ピッチ0.3mmの場合、0.3x層数が造形物の高さになります。
高さ1.0mmのデータの造形をする場合、最小積層ピッチが0.3mmであれば1.0mmを出すことができず、0.9mmか1.2mmでの出力になります。Z方向は積層ピッチに依存するので正確な寸法を出すことができない場合があります。
また、精密な作りの形状はさらに精度を出すのが難しくなります。その理由にはノズル径が大きく関わってきます。
ノズルとは溶かした樹脂を排出する3Dプリンターの部品です。このノズル径はZ軸方向の厚みに影響します。ノズル径が大きければ1つの積層の厚みが増し、造形時間が短くなり、反対に小さければ積層が薄くなり、造形時間が長くなります。
FDM方式は上面、底面、側面(壁)、内部充填(中を埋める)を繰り返してモデルを造形します。側面(壁)の厚みが薄いほど強度が下がり、正常な造形も難しくなります。ノズル径よりも細い幅は造形できません。
造形物の精度は切削加工による後加工で補うこともできます。
3Dプリンター出力は真円度が出にくい傾向にあります。熱溶解積層(FDM)方式、光造形方式のどちらも樹脂の膨張がネックとなり、寸法も±0.1mm~0.2mm程度の精度が限界です。
次に、ネジ加工の精度です。ネジの形成も3Dプリンターでのプリントとなると、樹脂を積み上げていく、硬化させていくと言う方式のため雌ネジ、雄ネジ共に強度が低くなります。
※造形できないわけではありません。
最後に表面粗さです。3Dプリンターは積み上げて形を作っていく仕組みであり、どうしても階段状の積層痕が残ります。また造形物の表面はノズルの動いた軌道が残ります。
3Dプリンター出力で造形後にマイナス目になってしまう穴は、切削加工の追加工によりH7公差も実現します。また下穴のみを3Dプリントしておくことで、タップ加工はもちろんのこと雌ネジの強度が必要な場合はヘリサート穴にすることも可能です。
※造形方向や内部充填の関係上、強度が維持できない場合もあります。
表面粗さは切削加工(マシニング加工)にて仕上げ加工をすることで寸法を±0.05mmの精度にすることも可能です。また、材質によってはペーパーやすりによる表面研磨を施すことで、より外観を美しくすることもできます。
光造形方式は3Dプリンター出力方式の中で寸法精度に優れた造形方式です。光で固まる性質の光硬化性樹脂を利用した造形のため、熱膨張や収縮が起こりにくく、X,Y方向の精度が良好です。
100mm未満の手のひらサイズであれば、X,Y方向は平均誤差0.1~0.2mm以内の精度で仕上がります。ハイエンドモデルの機械であれば、最高0.05mm未満の誤差にまで抑えられます。
一方で、Z方向はプラス目になりやすい傾向があります。光造形方式は底面からレーザーを照射して材料を固めます。1層分照射すると、1層分テーブルが下がり、次の1層を照射して積層していきます。造形が進むにつれてモデル材料は底面からつり下がった状態になります。
造形中の材料は完全には固まっていないため、造形サイズが大きい場合、自重でZ方向に延びることがあります。Z方向の誤差は0.3mm以内で、X,Y方向に比べると精度が劣ります。
プールに敷き詰めた粉末をレーザーで焼き固め、固まらなかった粉末がモデルを支えるサポート材になる造形方式です。安定した状態で造形されるため、X,Y,Z方向で同じ精度で仕上がります。
100mm未満のサイズは誤差0.3mm以内の精度で仕上がります。100mmを越えるサイズになると、誤差が大きくなり、ワークサイズに対して2%程度の誤差が出ます。
これは、粉末焼結方式に高温から急速に冷やされる工程があるため、反りが発生しやすいことが影響しています。特にプレート形状や、応力が集中する箇所は反りが発生しやすく、寸法以上に幾何学精度が悪くなることがあります。
材料加熱時の熱膨張の影響もあり、X,Y方向は誤差0.2mm程度の精度です。Z方向の精度は積層ピッチに依存します。
金属3DプリンターFDM方式は、造形後の工程で20%の収縮が発生します。これは金属材料のフィラメントが金属粉末に熱可塑性樹脂をバインダー(結合剤)として配合したものであるためです。造形完了時のモデルは金属と熱可塑性樹脂が混ざった状態です。造形後にバインダーを抜く処理があります。バインダー分、質量が減り、造形完了時と比べて約20%小さくなります。
造形物が誤差0.2mm程度の精度で仕上がり、さらにそこから20%収縮するので、精度のコントロールは他の造形方法に比べて難しくなっています。厳しい精度を求める部品の場合、追加工が必須です。
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